[ オピニオン ]
(2019/7/30 05:00)
10の力で始め、徐々に力を抜いて最後は3。ヘラ絞り歴50年の吉持剛志さんにこつを教わった。ベテラン職人の手にかかって、回転する円盤状の金属がいとも簡単に変形―。したように見えた。生まれたのは花器にも深皿にもなるデザイン性高い一品だ。
しかし、ヘラと呼ばれる棒状道具を受け取り挑んだ数秒後にプロとの差を痛感。思うように金属は変形せず、どこで力を抜けば良いのやら。段差だらけのいびつな形状を前に、ただただ大笑いした。
出会いは、GarageHigashiosaka(ガレージ東大阪、大阪府東大阪市)。職人やデザイナーだけでなく一般の人も出入りし、汎用機械や3Dプリンターに触れたり、モノづくり相談をしたりできる。
日本はこれからも付加価値の高い製品を生み出せるか? 吉持さんは「ヘラも3Dプリンターも使える若者の育成が必要」と考える。手作業とデジタルの融合だ。ヘラ絞りを多くの人に伝えたい、と“ガレージ”参画の動機を語った。
指導は優しくも厳しい。段差を修正しようとヘラに力を込めて無残に金属を破ったのを見て「ヘラ絞りは性格が出るんや」。いいあんばいに絞られた。今後の半生は慎重な行動を心がけるとしよう。
(2019/7/30 05:00)