[ オピニオン ]
(2019/7/30 05:00)
地方銀行の経営が厳しい局面が続いている。一方で見直されつつあるのが、一部の信用金庫・信用組合の取り組みだ。欧米では、2008年9月に発生したリーマン・ショック後、日本の信金・信組などの理念型経営形態である協同組織金融機関に相当するクレジット・ユニオンへの評価が高まってきた。地銀のレゾンデートル(存在意義)があらためて問われている。
全国地方銀行協会(地銀協)によると、加盟行64行の19年3月期決算は全体の約7割の41行が当期損益で減益となった。5月に東京都内で会見した地銀協の柴戸隆成会長(当時、福岡銀行頭取)は「地銀の収益力は徐々に低下している。今後もそれほど上がるとは考えられない」と強調する。
人口減やマイナス金利だけが地銀の苦境の原因だろうか。近年、金融庁は「持続可能なビジネスモデルの構築」とし、現状のままではたちゆかないと警鐘を鳴らす。最近の横浜銀行と千葉銀行の業務提携、あるいはふくおかフィナンシャルグループ(FFG)と十八銀行の経営統合は一つの回答だろう。
ただ、浜銀と千葉銀の業務提携は、異業種からの参入など競争環境は様変わりし、トップ地銀同士が組んでも盤石とは言いがたい。FFGと十八銀の経営統合も、店舗を統廃合しリアルの顧客接点を減らすのであれば、それに代わる地域、顧客の接点をどう構築していくかという視点が欠かせない。
未来の地銀のあり方にヒントはある。第一勧業信用組合(東京都新宿区)は無担保・無保証のコミュニティーローンを進める。その象徴が「芸者さんローン」だ。押し売り的な営業活動と決別し、「お客さまに好かれることをする」原則を貫く。一方、枚方信用金庫(大阪府枚方市)は、高齢者世代が枚方市内のサービス付き高齢者向け住宅や特別養護老人ホームなどの高齢者専用住宅に移り住む場合、所有住宅は売却や賃貸などで、子育て世代の転入を進める。
地銀は地域に密着して、地域の雇用、経済に貢献していく信金・信組の姿勢に学ぶべきだ。
(2019/7/30 05:00)
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