[ オピニオン ]
(2019/7/31 05:00)
北大路魯山人の没後60年を記念した巡回展が、碧南市藤井達吉現代美術館に続き、現在、千葉市美術館で開かれている。9月からは滋賀県立陶芸の森陶芸館でも行われる。魯山人といえば、書や篆刻(てんこく)からスタートし、陶芸や美食などの分野で活躍した総合芸術家だ。
同時代を生きた濱田庄司は、東京高等工業学校(現東京工業大学)で窯業を学び、卒業後は京都市立陶芸試験場で釉薬(ゆうやく)を研究した。魯山人は幼少時は家庭に恵まれず、陶芸も専門的に学んだわけではない非エリートだ。
魯山人にとっては「古典そのものが学校だった」(藁科英也上席学芸員)。日本の伝統的な美術をベースに、板皿に足を付けた食器を創り出すなど、現代美術との架け橋となった。
また伝統的な焼き物づくりのシステムを巧みに生かし「自分の能力を十二分に引き出せる職人を集めてまとめ上げた」(藁科上席学芸員)。そして10万点以上にのぼる作品を生み出した。
つまり魯山人はプロデューサーでもあった。逆にいえば一人では膨大な作品をつくることはできなかっただろう。経済活動や国際情勢などさまざまな場面で転換期に直面している中で、一人の力では限界があると魯山人の作品が語りかけているように聞こえる。
(2019/7/31 05:00)