[ オピニオン ]
(2019/7/31 05:00)
東芝メモリホールディングスが社名を「キオクシアホールディングス」に10月1日付で変更する。2018年6月に米ベインキャピタル中心の日米韓企業連合に買収されたが、今回の社名変更で名実ともに東芝グループから離れることになる。ただ、名門企業の看板を名残惜しむ暇はない。
まず、NAND型フラッシュメモリー市況の低迷だ。18年後半から価格が下落し、足元でも底を打ったとは言いがたい。例年は年末商戦に向けてスマートフォンやパソコン新商品向けの供給が本格化する夏場から価格が急回復するはず。ただ、19年は不透明さが強い。
米中貿易摩擦による中国の景気減速に加えて、米国政府による中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)への輸出禁止措置の行方も定まらない。同社は東芝メモリにとって大口顧客の1社だ。
一方で、日本政府による韓国への半導体材料輸出規制は、ライバルの韓国・サムスン電子に影響を与えるため、東芝メモリは漁夫の利を得られるかもしれない。これらの市況の波乱要因が多く、また複雑に絡み合って先が見えない状態だ。
独立前から事業を引っ張ってきた成毛康雄社長の病気療養入りも心配だ。9月に復帰する予定だが、年内の株式上場が厳しくなり正念場を迎えての求心力の低下が懸念される。
東芝の看板を下ろす今こそ、真のグローバル企業へ生まれ変わる好機だ。ファーウェイ以外の中国新興スマートフォンメーカーなどを開拓するとともに、米中摩擦の間隙(かんげき)を縫ってファーウェイとの取引を増やすしたたかさも必要だろう。
キオクシアとは、日本語の記憶とギリシャ語のアクシア(価値)を組み合わせた造語だ。東芝メモリの英語表記の略語であるTMCなど候補は他にもあったものの、国内外の商標登録などの関係でキオクシアに落ち着いたようだ。現在はまだ耳慣れないが、半導体メモリー事業のさらなる成長に応じて、新社名も人々の頭に記憶される日が来るはずだ。
(2019/7/31 05:00)
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