[ オピニオン ]
(2019/8/16 05:00)
第7回アフリカ開発会議(TICAD)が28日から30日の日程で、横浜で開催される。資源獲得やインフラ開発の側面が色濃かったアフリカの経済開発だが、デジタル革命をテコにビジネスモデルが大きく変わりつつある。日本企業も成長の糧を見いだす視点で、新たな巨大市場に向き合いたい。
アフリカ諸国の人口合計は、2025年には中国やインドに匹敵する見込み。新興国市場としての潜在力に加え、携帯電話の爆発的な普及を弾みに新たなビジネスが生まれている。
脆弱(ぜいじゃく)な電力供給体制や物流網を、デジタル技術を駆使して解決するスタートアップ企業が相次ぎ誕生し、経済成長を加速させている。デジタル技術がもたらす社会変革や社会課題を克服するイノベーションは、アフリカを起点に世界展開できる可能性を秘めている。
しかし日本企業にとってアフリカは地理的にも心理的にも遠い存在で、安定した事業基盤を確立している企業は決して多いとはいえないのが実情。数少ない現地展開企業も、市場の変貌ぶりに驚きつつ“次の一手”を模索している。
政府は今回のTICADを契機に、新たな局面に入ったアフリカビジネスを多面的に支援する方針。具体的には貿易保険の枠組みなど制度面の施策拡充にとどまらず、日本企業と現地のスタートアップ企業の連携など人的な交流を促す構えだ。6月には「アフリカビジネス協議会」を発足し、官民の情報共有を通じてビジネス機会の拡大や投資環境の整備につなげる。
日本におけるアフリカビジネスは、TICAD開催年だけ一時的な盛り上がりをみせると言われてきた。政府関係者は「今回ばかりは様相が異なる」と力を込める。
政府が旗を振るだけで、日本企業がアフリカで事業展開する上での懸念材料が払拭(ふっしょく)できるわけではない。ただイノベーションの実験場と化しているアフリカで、日本が目指す「課題解決先進国」としての力量を発揮できるか否かは、日本の成長戦略に直結するだろう。
(2019/8/16 05:00)