[ オピニオン ]
(2019/8/19 05:00)
9月20日に開幕するラグビーワールドカップ(W杯)、2020年7月の東京五輪・パラリンピック開催を控え、訪日外国人需要の増加が期待される。相次ぐ世界的イベントを好機として消費の底上げにつなげたい。そのためには訪日外国人の実態を踏まえた上で、有効な対策を打ち出すことが欠かせない。
観光庁が7月に公表した19年4―6月期の訪日外国人旅行消費額は推計で、前年同期比13・0%増の1兆2810億円と、過去最高額になった。19年上期(1―6月)も2兆4326億円と過去最高。一般客1人当たりの旅行支出は同7・8%増の15万6670円だった。
一方、19年4―6月期の訪日外国人旅行消費額を国籍・地域別で見ると中国が4706億円と最大。次いで台湾の1457億円、韓国の1227億円、米国の946億円、香港904億円の順だった。上位5カ国・地域で全体の7割超を占める。ところが1人当たりの支出や費目別の支出を見ると違った姿が浮かび上がってくる。
1人当たり支出の上位は1位フランス(24万2491円)、2位英国(23万5327円)、3位豪州(23万1674円)の順。この3カ国は国籍・地域別では7位以下にとどまる。
政府が03年に「ビジット・ジャパン・キャンペーン」を開始して以来、訪日外国人は着実に増加し、観光産業が地域を支える存在になりつつある。ただ近隣諸国からの訪日客が大きな比率を占めており、リピーター客は“爆買い”をしなくなる傾向も見られる。
1人当たりの旅行消費額が多い国からの旅行者を増やしたり、リピーターにも消費を促したりする工夫ができれば、経済の押し上げ効果が期待できる。最近の日韓関係の悪化によるマイナスを補う必要もあろう。
注目すべきは、欧州・豪州からの観光客はアジアなどに比べ、娯楽などサービス費の支出が多い傾向にあることだ。宿泊費や飲食費だけでなく、日本ならではの魅力を体験できる「コト消費」へもっと誘導する施策が望まれる。
(2019/8/19 05:00)