[ オピニオン ]
(2019/8/20 05:00)
「暑おすなぁ。そっち(東京)はどうどす?」―。“ふらり”という言葉そのままに、清水寺貫主の森清範師が、下京の安養寺(澤田教英住職)に姿を見せた。
「蓮(はす)を見ると、お盆やなぁと感じますな」。安らぎの声が本堂を包む。「どんなところにもご先祖さんが帰ってきはる。何でもよろし、水をあげて、そこにご先祖さんを想念してください。どなたにも親はいる。そして皆さんが存在する。お盆くらいはご先祖さんに想(おも)いを馳(は)せてください」。
平成から令和へと、時代をまたぐ清水寺の大改修。「清水の舞台」や本堂を覆う素屋根の珍しい姿に、驚かされた観光客も多いのではないか。中では本堂の屋根の檜皮(ひわだ)の葺(ふ)き替(か)えが進む。50年ぶりという。ヒノキの皮を重ね、竹のクギで留める。重ねること厚さ17センチメートル。
出雲大社で使ったヒノキの皮は40トン。それすら凄(すご)い量だが、清水寺では156トン必要だという。原木が減り、調達が思うに任せない。職人の技の伝承も心細い。次の世代の改修はどうなるのだろう。
「“送り火”が心配どしたな」と森師。超大型の台風10号が中国地方を縦断した翌16日の夜、聖なる炎が京の街を紅(あか)く染めた。精霊が浄土に還れば、京に吹く風は少しずつやさしくなる。
(2019/8/20 05:00)