[ オピニオン ]
(2019/8/28 05:00)
厚生労働省は公的年金の将来財政見通しを確認する「年金財政検証」を公表した。今回も男性現役世代の平均手取り収入額に対する65歳時点の「夫婦二人世帯」の厚生年金給付水準を示す所得代替率は、2040年代半ばまで5割台が見込めるとした。ただ重要なのは推計結果そのものではなく、今後の年金改革の議論に生かすことである。
年金財政検証はあらゆる経済前提をベースに、5年ごとに年金保険料や給付額の将来推計を行う、いわば公的年金制度の「人間ドック」といえる。財政検証を受け、政府は年末までに改革案をまとめ、20年の通常国会に関連法案を提出する。高齢者の増加と若者減少という人口構造の急激な変化に正面からどう立ち向かうかが焦点となる。
注目されるのが所得代替率である。現在は61・7%だが、経済成長と労働参加が進んだ場合、基礎年金で「マクロ経済スライド調整」が終了する40年代以降も厚生年金の所得代替率は5割を維持できるとした。
一方で、被保険者の非正規雇用者への拡大や支給年齢の引き上げ、在職老齢年金の見直しを行った場合の「オプション試算」を示すなど、苦しい財政事情も明らかになった。
オプションでは年金給付水準確保の手段として、非正規労働者の厚生年金の適用拡大案を示した。短時間労働者や一定収入がある学生、雇用契約期間1年未満の者も年金の支え手とする案だ。支え手は増えるが、中小企業や非正規労働者、学生の保険料負担が増えることになる。
同時に、基礎年金の加入期間延長や65歳以上の在職老齢年金制度の廃止、厚生年金加入年齢の上限を現行の70歳から75歳に延長する案も示した。受給開始年齢を75歳まで伸ばし、同年齢まで働いた場合の年金給付水準は現役時代の所得とほぼ同じ額になるという。
ただ誰もが健康で100歳まで生きられるわけではない。年金改革は待ったなしだが、単身・高齢世帯が急増する中で現行制度は老後を夫婦二人ですごすことを前提にしている。世帯構成の変化に応じた改革を望む。
(2019/8/28 05:00)
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