[ オピニオン ]
(2019/8/30 05:00)
日本の原子力産業の再生と原子力発電所の新増設の突破口として、新体制に期待する。
東京電力ホールディングスと中部電力、日立製作所、東芝の4社が、沸騰水型原子炉(BWR)の共同事業化の検討に合意した。BWRの原発は全国に複数あるが、東日本大震災後に再稼働した例はない。
BWRは重大事故を起こした福島第一原発と同型であり、安全性に対して慎重になることは理解できる。とはいえ個々の原子力プラントは同一ではなく、新たな安全基準への対応にも着手している。一歩ずつ再稼働を進めるのが本筋だろう。ただ現実に将来展望が立たない中で、電力事業者や原子炉メーカーが焦りを覚えるのは当然だ。
4社による共同事業化の検討は、こうした行き詰まりの打破を狙ったものといえる。東電はこれまでも、建設が中断している東通原発(青森県東通村)を他社と共同で事業化する道を探ってきた。この新原発が共同事業の候補になる。
むろんハードルは高い。原発の設置許可は事業者の変更を予定しておらず、国の後押しがなければ共同事業化は不可能だ。仮にBWR4社の共同事業化が合意できても、それが既存原発の改修や廃炉支援にとどまっているなら、原子力産業の育成にはならない。日本の技術が他に劣後し、将来のエネルギー供給に支障を来すことを恐れる。
東日本大震災後、社会の一部に「原発は不採算だ」という意見が広まっている。耐用年数の残りが短くなった既存設備に、後付けで巨額の改修を義務化すれば、どんなプラントでも採算はとれなくなり、事業者は後ろ向きになる。最初から十分な設備を備えた原発なら、収益モデルは違うものになろう。
政府は将来的に原発依存度を可能な限り引き下げる方針で、これまで原発の新増設について議論してこなかった。一方、産業界では経団連が、日本の将来のエネルギー供給を真剣に議論した上で、原発の新増設も検討すべきだと提言している。政府には、こうした産業界の意見に耳を傾けてもらいたい。
(2019/8/30 05:00)
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