(2019/9/10 05:00)
世の中を便利にし、豊かにする。その背後には必ずと言っていいほど技術や技能がある。笑いで人を元気にする芸人も例外ではない。
吉本興業(大阪市中央区)のお笑い芸人による闇営業問題は、技能集団であるお笑い業界に汚点を残した。事務所の管理体制の甘さや広報対応の遅れも、国民から厳しい視線を浴びた。
ただ、芸人の多くは事務所からの仕事だけでは生活できず、アルバイトで食いつなぐ日々を送る。事務所を通さず仕事する芸人に同情する声も少なからずあった。
若い頃に自分の技を磨き修行するという点に限れば、大学に所属する大学院生や博士研究員(ポスドク)と境遇が似ているかもしれない。政府は博士号取得者を増やすため「ポスドク1万人計画」を実施。その結果、正規の職に就けないポスドクが大量発生する問題を生んだ。私事で恐縮だが、春秋子もポスドクだった。
漫才日本一を決めるコンクール「M1グランプリ」は新人発掘だけでなく、出場条件を結成10年(現在は15年)以内とすることで、芸人に「辞めるきっかけを与える」意図もあった。道を究める努力は素晴らしい。しかし、自らの限界を感じ、別の道を選ぶ勇気を持つことは、同じくらい大切ではないだろうか。
(2019/9/10 05:00)