(2019/9/16 05:00)
企業の「身売り」―。こう聞くとどんなイメージを抱くだろうか。借金で首が回らなくなった時の最後の手段、自力での成長を諦め泣く泣く…。こんな印象が根強い中、ZOZOのヤフーへの身売りは様相が違った。
ヤフー傘下入りを説明した先週の記者会見。Tシャツ姿で登場した創業者の前沢友作さんは従業員への思いを聞かれた時を除いて終始笑顔だった。
「ファッションにそれほど興味のない人にもアプローチが必要」と課題を認めつつ、幅広い層の利用者を抱える「ヤフーと成長を目指すための決断」と前向きに話した。前沢さん自身も「宇宙や新事業に挑戦したい」と意欲をみせた。
一時、米アップルを追放された故スティーブ・ジョブズ氏は他社から買収した事業をもとに米ピクサーを設立し、その後、米ディズニーに身売りした。ピクサーのローレンス・レビー元最高財務責任者(CFO)の著書『PIXAR』によると、事業多角化の選択肢もある中で売却を決めたという。
身売りは飛躍のための有力な選択肢になり得る。日本では「後ろ向きに捉え、尻込みする経営者が多い」と、INCJ(東京都千代田区)会長の志賀俊之さんは指摘する。前沢さんの決断が起こす変化に期待したい。
(2019/9/16 05:00)