(2019/9/19 05:00)
内閣府は、経済の実態に合わせるため国内総生産(GDP)統計を見直す。政府の統計改革の一環で、個人間でやりとりする「シェアリングエコノミー」(共有型経済)のGDP算入を検討している。民泊に代表される成長著しい新分野は、従来の「取引」の概念を変えつつあり、GDPに対する“寄与度”に注目したい。
GDP統計は、国民が合理的な意思決定を行う際の基盤。政府の経済財政諮問会議がまとめた「統計改革の基本方針」には同統計の改善が盛り込まれた。今回切り込むのはGDPの約7割を占めるサービス業。2020年度は政府統計の基準改定年であり、内閣府は「できる取り組みから始める」という。
シェアリングエコノミーのGDPへの反映では、公的調査の対象外だった民泊分野などの付加価値額を政府の調査で捕捉する。手始めに内閣府は、17年のシェアリングエコノミー生産額(市場規模)を前年比約50%増の6300億―6700億円程度、生産額から中間投入を除いた付加価値額を1300億―1500億円程度と試算した。
個人が募集や申込時に支払うインターネット上のプラットフォーム(基盤)手数料の付加価値額400億―500億円程度は、「インターネット付随産業」としてGDPに算入済み。今後捕捉するのは、手つかずだった付加価値額800億―1000億円で、その7割を民泊分野が占めるとみられる。
シェアリングエコノミーはデジタルエコノミーという新たな経済領域の一角を占める。日本はデジタル関連の付加価値額について細かい分野でGDPに算入してきたが、デジタルエコノミーの全容は把握できていない。経済協力開発機構(OECD)の枠組みで言葉の定義や対象サービス、算出方法などのすり合わせを進めており政府には主導権を発揮してもらいたい。
経済の先行きに不透明感が増す中、社会の実態を的確にとらえる政府統計は重要性を増している。国民の納得感が得られる施策を打つためにも、改善の成り行きを見守りたい。
(2019/9/19 05:00)
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