(2019/9/23 05:00)
企業のメンタルヘルス対策が足踏み状態にある。2015年から従業員50人以上の企業でストレスチェックが義務化されたが、多くはチェックどまりになっているのが実情。特に人材に限りがある中小企業では対応の遅れから貴重な戦力をそいでしまわないよう、トップが経営リスクと認識することが重要だ。
厚生労働省の「労働安全衛生調査(2018年)」によると、メンタルヘルス対策に取り組んでいる企業の割合は50%台後半。また17年調査では、ストレスチェックの集団分析結果を職場の環境改善に活用している企業も約51%にとどまっている。
産業医に精神科医が少なく、外部のカウンセラーに直接連絡できる体制がとれているのは一部の大企業に限られるという課題もある。企業は予防のための社風づくりや、発症者の早期発見、休職者が復帰しやすい職場づくりが急がれる。
企業活力の維持にも対策が欠かせない。ある企業の試算によると、従業員が1カ月間休職すると、代替要員の人件費などを含めて最低でも月80万円ほど直接経費がかかるという。休職が長引くほど負担も増える。また休職者が相次ぐことは企業イメージの低下につながり、採用難に陥る恐れもある。
職場のメンタルヘルス対策に詳しい専門家は「問題が少ない企業ほど、日常業務の中で上司がきめ細かく対応している」と話す。管理職は日頃から「欠勤が増えた」「仕事が進まない」「いつも眠そう」など部下の心の健康管理を意識することが肝要だ。変調が出たら、心の問題を疑う習慣をつけたい。
メンタルヘルス対策に効果的なのは早期の発見と治療だ。本人からはカミングアウトしにくい問題であることが多いため、社員研修などに“心の健康対策”を取り入れ、心の悩みごとについて話しやすい環境づくりをしておきたい。
10月1日から「健康づくりは 人づくり みんなでつくる 健康職場」をスローガンに全国労働衛生週間が始まる。この機会に心の健康づくりを前進させてほしい。
(2019/9/23 05:00)