(2019/9/30 05:00)
関西電力の役員や社員ら20人が、福井県高浜町の元助役(故人)から3億2000万円分の金品を受け取っていた問題は、関西電力という一企業だけでなく、今後の日本の原子力・エネルギー政策にも多大な影響を及ぼす。まずは今回の問題について調査を徹底し、結果を明らかにしてもらいたい。
原子力発電所の立地や稼働には地元の理解と合意が不可欠だ。だが、その裏で電力会社が特定の人物と密接な関係を持ち、金品の授受もあったとなれば地元だけでなく、国民の原子力政策に対する理解も得られまい。
今回の問題は、金沢国税局の税務調査で、高浜町の元助役が関電の原発工事を受注した建設会社から3億円を受領し、さらに元助役から関電側に金品や高額な物品などが提供されていたことが判明した。
関電は国税からの指摘を受け、2018年7月に調査委員会を設け、社内調査した。関電の岩根茂樹社長は「儀礼の範囲内以外のものは返却した。社内の関係者の処分も行った」と説明したが、具体的に誰がどれだけのものを受け取り、どのような処分を科したかについては、一切明らかにしなかった。これでは理解を得られない。第三者による調査委員会を設け、関係者への徹底した聞き取りをしてもらいたい。
菅原一秀経済産業相は今回の問題について「事実とすれば言語道断だ」と述べ、担当部局に関電への聞き取りを指示するとともに、今後厳正に対処する意向を示した。原発の立地には国の税金から電源立地地域対策交付金などさまざまな交付金が投じられている。経産省にも事実を解明する責任がある。
原発立地の困難さは、過去のさまざまな例を見ても明らかだ。しかも東京電力の福島第一原子力発電所の事故以来、国民の原発を見る目はさらに厳しくなっている。だからこそ、不透明な金銭の授受や、特定の個人が立地を牛耳るような状況はあってはならない。今後の立地対策を進めるためにも、問題の背景を明らかにすることが何よりも重要だ。
(2019/9/30 05:00)
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