(2019/10/2 05:00)
1年ぶりに訪ねたミャンマー中部のバガン遺跡は、観光シーズンに入ったばかり。機内はほぼ満席だった。バガンは世界3大仏教遺跡の一つとされ、7月に同国2番目の世界遺産に登録された。
遺跡には、約3000もの寺院やパゴダ(ミャンマー式仏塔)が点在する。でこぼこ道を馬車でのんびりと寺院を巡る観光風景は一変し、道路や街灯、バスの駐車場が整備されていた。
日本語が堪能な現地の友人と、村外れのパゴダを訪ねた。仏塔の中を痩せたホウキで掃除していた老爺(ろうや)が歩み寄ってきて「私たちの仏様を拝みに来てくれてありがとう」と笑顔で迎えてくれた。これには大都会のヤンゴンに住む友人も感動していた。
はるか昔、この地に都を置いた統一王朝があった。王は武力ではなく宗教で国を治め、バガンは仏教研究の聖地になった。今も信仰心の篤(あつ)い地元の人々にとって、寺院やパゴダを守ることは生活そのもの。世界遺産に登録されても、1000年間受け継がれてきた営みに変わりはない。
ミャンマー政府は外貨収入を増やす手段として世界遺産登録を進めた。外国人向けの入場料金を大幅に引き上げ、観光客の受け入れに備える。変貌しつつあるバガンの姿に、どこか寂しさを感じた。
(2019/10/2 05:00)