(2019/10/8 05:00)
2020年度診療報酬改定に向けた議論が本格化しつつある。厚生労働省が9月に発表した18年度の概算医療費は、前年度比0・8%増の42兆6000億円で過去最高を更新した。近年は高齢化の加速で医療財政が圧迫される懸念が強まる中、薬剤費削減の流れが続いている。革新的な医薬品を評価して適切な薬価をつける意味でも、多角的な視点で医療を効率化していく努力が欠かせない。
18年度診療報酬改定では、医師や薬剤師の技術料にあたる「本体」部分が0・55%のプラス、薬価は1・65%のマイナスとされた。高齢化の進展に伴う社会保障費の伸びを抑えることが必要だが、医療関係者の収入に直結する本体部分の削減は容易でない。結果として、薬価を切り下げることで財源を捻出する流れになっている。
一方、先進的で高額な医薬品は増えつつある。例えば19年5月に薬価収載された白血病薬「キムリア」は約3349万円。患者の血液から免疫機能をつかさどるリンパ球の一種であるT細胞を採取し、がん細胞を認識するための遺伝子を導入して患者へ戻すオーダーメードの治療法で、コストがかさむ。
革新的な新薬に報いるためには、メリハリのある薬価制度が必要だ。特許の切れた先発医薬品を後発医薬品に置き換えることを促したり、市販薬で代替可能な製品は保険償還の対象から外したりすることが求められよう。健康保険組合連合会は8月、花粉症治療薬を公的医療保険の適用外にすべきだとの提言をまとめた。重症患者への配慮などは課題になりそうだが、一石を投じた意義は大きい。
もちろん薬価制度だけでなく、医療全体の効率向上も意識しなければならない。患者の健康を日常的に把握する「かかりつけ医」の枠組みの高度化や、情報通信機器を活用して患者の診察や診断を即時に行う「オンライン診療」の普及をどう進めるかなどが焦点になろう。過重労働に陥りがちな医師の働き方改革も重要だ。検討事項は山積するが、全体最適の実現に向けた議論の進展を期待したい。
(2019/10/8 05:00)
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