(2019/10/9 05:00)
日本郵政グループが、かんぽ生命保険の不適切販売問題で中間報告を発表した。不正のツケは国民資産を毀損し、政府の追加株売却計画にも暗雲が立ちこめる。一刻も早い全容解明と経営手法の見直しが急がれる。
保険業法や社内規定違反の疑いがある契約は過去5年間で6300件を超えた。原因の徹底調査を進める外部専門家による特別調査委員会(伊藤鉄男委員長=元最高検察庁次長検事)が年末をめどにまとめる報告書では被害が広がる可能性がある。
新契約に保険の乗り換えを勧める際に、半年は解約できないなどと虚偽の説明をし、保険料を二重払いさせていたケースが多い。高齢者を狙った強引な勧誘手法も目立っている。
かんぽ生命の商品は旧簡易保険として全国の郵便局で販売されてきた。郵政民営化で一民間生命保険会社となったが、販売は全国約2万4000の郵便局に頼り切っている。一方、販売手数料収入に依存する日本郵便も民間生保にはない信頼を背景に不正な販売手法に手を染めていった。
民営・分社化以降、保険担当者にはノルマが課される一方、新契約獲得次第で収入が上がる歩合制が強まった。“目標額”を達成できない担当者は年収ダウンに加え、厳しい叱責(しっせき)や研修という名の罰則が科された。
2016年4月から保険限度額が2千万円に引き上げられたことで被害が拡大したともいえる。低金利時代に入り、入院保障などの“特約”を重視するようになったことも背景にある。
日本郵政の長門正貢社長は「(日本郵政の)取締役会に全く情報が上がってこなかった」と弁明するが、長門氏はかんぽ生命、日本郵便の取締役も兼務する。もしそうなら日本郵政グループには企業統治が全く機能していないことを表している。
日本郵政は10月に予定していたかんぽ商品の営業再開を来年1月以降に延期するが、ゆうちょ銀行でも高齢者への不適切な投資信託商品の販売が見つかっている。企業統治の見直しができなければ、郵政民営化は「失敗」との烙印(らくいん)を押されかねない。
(2019/10/9 05:00)
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