(2019/10/10 05:00)
現役の企業人としては、2002年に同じ化学賞を受賞した島津製作所の田中耕一さん以来の栄誉である。旭化成名誉フェローの吉野彰さんがノーベル化学賞に輝いた。
リチウムイオン二次電池の基礎研究は共同受賞した米国の2氏が成果を上げたが、実用化に貢献したのは複数の日本メーカーの技術者だ。受賞者は最大3人というノーベル賞の制限が恨めしい。
吉野さんは日刊工業新聞の紙面やイベントに数多く登場し、創造的な技術について金言を残している。05年の『モノづくり推進シンポジウム』では「シーズとニーズのギャップを埋める作業を、短期間にいかに数多く繰り返すか」と強調。
11年のインタビューでは「15年先に世の中が何を必要とするかを見極めることが重要だ」と話した。研究着手時にはIT革命を予想していなかったものの「未来からの信号をキャッチしていた」とか。
14年に物理学賞を受賞した青色発光ダイオードに続き、現代人の生活を変えた画期的な技術が日本から発信されたことを誇らしく思う。電池ビジネスは国際競争が激化し、より優れた二次電池も登場している。常に次の時代を展望してきた吉野さんのエールに応える新技術が生まれることを祈っている。
(2019/10/10 05:00)