(2019/10/10 05:00)
スウェーデン王立科学アカデミーは9日、ノーベル化学賞を「リチウムイオン二次電池」を開発した旭化成名誉フェローの吉野彰氏(71歳)と米国のジョン・B・グッドイナフ氏、M・スタンリー・ウィッティンガム氏の3人に授与すると発表した。
リチウムイオン電池は正極にコバルト酸リチウムなどのリチウムイオンを含有した金属酸化物、負極にカーボン系材料を用いた電池。グッドイナフ氏とウィッティンガム氏が基礎的な研究成果を上げた。吉野氏は1983年に原型を開発し、85年に現在のリチウムイオン電池の特許を出願した。
当時は車載型の携帯電話のレンタルが開始されるなど、モバイル機器の黎明(れいめい)期だった。その後、電池も機器も小型化が進み、より手軽に持ち運びができるようになった。
リチウムイオン電池はスマートフォンやノートパソコン、ビデオカメラ、デジタルカメラ、携帯用音楽プレーヤーなどに広く使われ、現代人のモバイル生活になくてはならない存在だ。近年は電気自動車にも搭載されて環境保全に役立つ一方、海上自衛隊の通常型潜水艦の動力に使われるなど利用シーンを広げている。
吉野氏はインタビューの中で、どんな電池が求められているのかということに気付いたのは「“はやり言葉”がきっかけでした。『コードレス』『ワイヤレス』という言葉が使われるようになった。時代の流れの中で、世間が何を求めているのかという匂いを感じ取る、一種の嗅覚のようなものだと思います」と話している。
吉野氏は昨年4月に国際科学技術財団の第34回日本国際賞を受賞したほか、数多くの賞を受賞し、「ノーベル賞に最も近い産業人」と目されていた。
かつて電話は一家に1台の固定電話が普通だったが、今は一人1台のスマホを持つことも当たり前になりつつある。外出先でも電話やメールが受けられる。こんなすごいものを開発した吉野氏らのノーベル賞を喜びたい。
(2019/10/10 05:00)
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