(2019/10/11 05:00)
健康のため山歩きを始めた。登山口へ向かう途中、廃墟になった集落を通る。家並みは夏草に埋もれ、庭には朽ちた椅子や自転車。生活の痕跡を目にすると何やら切ない気持ちになる。
空き家が社会問題化する中、埼玉県秩父市と周辺4町が運営する空き家仲介サービス「ちちぶ空き家バンク」が注目を集めている。今年3月末までの8年余りで成約は180件に達した。
移住者の中には秩父地域で起業や就職する人もいて地域振興に一役買っている。自然が豊かで特急を使えば都心から約1時間20分という地の利もあるが、地元有志の郷土愛が原動力になっている。
不動産や建設などに携わる産業人のネットワークが移住者の受け皿になり、5市町連携で物件数を増やした。セミナーや見学ツアーの開催など、あの手この手の積極策が功を奏した。
総務省「住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家数は846万戸(2018年10月)。「親から相続したが入居しない」などの理由で5年前より26万戸増えて過去最多に。全国で約1200市町村が空き家バンクを設置しているが、多くは利用者が伸び悩む。ただ、秩父市でも「市民の減少は止まらない」と聞き、人口減少社会の深刻さを実感する。
(2019/10/11 05:00)