(2019/10/21 05:00)
今年は五つの台風が日本列島に上陸し、多くの死者が出た。今後も台風による激甚災害は頻発すると覚悟したほうがよいだろう。東京都世田谷区では、住民が景観を優先して堤防建設が遅れた地域で越水した。都市のグランドデザインを描く際は、住民が日常生活で求める利便性や景観と、100年に一度の災害という時間軸の異なる課題を結びつける発想が重要だ。
台風19号では、自然災害に強いと思われていた川崎市武蔵小杉地区のタワーマンションが浸水し、生活機能を失うという弱点をさらけ出した。地下の配電盤が浸水して停電や断水が起き、エレベーターやトイレも使えなくなった。堅牢(けんろう)なタワーマンションも構内のライフラインが途絶えるとひとたまりもない。浸水の原因は増水した多摩川の水が、本来は街に降った雨水などを川に流す排水管を逆流し、マンホールから噴き出す内水氾濫を起こしたとみられる。
この地域は都心に近く便利なため人気が高く、この数年で10棟以上のタワーマンションが建設された。だが急激な人口増加に下水などのインフラ整備が追いつかず、保育園や学校は不足している。ラッシュ時には駅が大混雑するなど都市機能のキャパシティーを超えている。急速な都市化が災害の遠因になった可能性は十分に考えられる。
世田谷区の二子玉川駅付近でも、多摩川の水が住宅地にあふれ出た。原因は本来なくてはならない高さの堤防が建設されずにきたためだ。戦後に宅地化された川べりの一角は水害の危険が指摘されていた。だが水辺の景観を重視する地域住民と国の話し合いが長引き堤防建設が遅れ、今年6月の話し合いで国が示した資料では越水の危険が明確に指摘されていた。
日本は少子高齢化時代を迎え、都市機能の維持・再生のために居住誘導地域を設けるコンパクトシティー政策を進めている。居住誘導にあたって、どこでどのような暮らし方をしたいのかという住民の要求と防災を、いかに高い次元で両立させるのか。台風19号は都市防災の新たな課題を突きつけている。
(2019/10/21 05:00)
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