(2019/10/29 05:00)
2020年3月期決算企業による第2四半期決算発表が今後、本格化する。米中貿易戦争、それに伴う中国経済の減速など外部環境の変化に対し、日本企業の“稼ぐ力”の真価が問われている。決算発表期には決まって、株主資本利益率(ROE)が注視されるが、果たしてROE経営は絶対的なものなのか―。日本企業にとって「もろ刃の剣」との認識を持つべきだ。
ROE経営は企業価値を測る指標の一つ。株主資本(自己資本)で、どれだけ利益を上げているかを示す。中長期の経営計画でROE向上を掲げない企業はほぼ皆無。ROEを改善することが経営の要諦であると信じる経営者は後を絶たない。
理論的にはROE向上と企業の成長力は相関する。分母(株主資本)が変わらなければ、分子(利益)の増加に伴い数値は上昇。市場の評価も当然上がり株価は上昇する。ひいては時価総額の増加という企業価値の増大が期待できる。ROE経営が絶対視される理由はこの点に集約されるが、現実はROEを重視するあまり成長を通じた目標達成とは異なる動きも散見される。ひとつが自社株買いだ。
上場企業の自社株買いは急増しており、19年度は初めて10兆円を突破する勢いだ。アイ・エヌ情報センター(東京都千代田区)の調べによると、19年度上期(4―9月)の自社株取得実施総額は前年同期比約90%増の4兆5769億円で、金庫株解禁の01年度以降で最高になった。自社株消却は分母を減らし、簡単に数値を改善できる。米国では利益を上回る規模で自己株を取得するケースもある。
ROE経営は資本効率改善や株主への利益還元策であり、それ自体、否定されるものではない。しかし、行き過ぎた株主資本主義では、短期的な利益追求と株主還元ばかりが優先され、企業の中長期的な投資や研究開発投資がないがしろにされる危険性を秘めている。これがROE経営最大の落とし穴である。
株主を重視し、投資の効率化を図るROE経営。日本企業の成長の源泉だった中長期的視点を加味したい。
(2019/10/29 05:00)
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