(2019/10/30 05:00)
新しいアイデアや先進的なデジタル技術の実用性を試すPoC(概念の実証)が産業界で相次ぐ。目指すはイノベーションの創出だが、現場では“PoC疲れ”が散見され、踊り場に立っている。これを超えて、さらに歩を進めるには経営による後押しが必要だ。
PoCの事例では、データ分析を目的としたIoT(モノのインターネット)関連が最も多い。製造業などでは、装置や設備の稼働データを人工知能(AI)で分析して、故障の予防などに役立てるシステムが至る所で使われている。
こうした仕組みは分かりやすく、効果的に思えるが、現場では分析結果をどう収益に結びつけるのかが分からず、データを集めただけで立ち止まってしまうケースは数多い。経営陣もまた然り。デジタル変革(DX)の狙いが曖昧な中で、AI・IoTの活用を現場に命じる結果、PoCの実行がルーティンのようになってしまうことがある。これがPoC疲れの元凶だ。
DX人材の海外事情に詳しい識者は「日本の場合、PoCといっても、多くはプールサイドでパーティーを開いているようなもの。にぎやかに見えても、皆、泳がないし、誰も泳いだこともない」と酷評する。
一方、IT・電機業界ではイノベーション創出に向けて感性を刺激するような空間演出をこらしたDX拠点の設立が相次ぐ。DX拠点に求められるのは江戸時代の出島のような役割だ。
DXに挑むと、既存の事業の破壊や共食いが生じることもあり、「本社で既存のビジネスを支えている人たちから、異端として扱われ、未来の芽がつぶされてしまう」(外資系ITベンダー幹部)。本社から抜け出て、自由に動ける組織や場所を設けることで、イノベーション創出に挑む企業は増えつつある。
とはいえ経営陣が旧態依然としたままでは、DXはかけ声だけとなってしまう。大切なのは全社レベルでの意識改革。経営陣が意識改革を先導し、現場の人たちの背中を押すことで、PoC疲れを乗り越えてほしい。
(2019/10/30 05:00)
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