(2019/11/12 05:00)
大盛況の内に閉幕したラグビーワールドカップ(W杯)。何試合か観戦して最も印象に残ったのがアイルランドの観客だ。
日本代表がアイルランド代表から大金星を挙げた試合後、予期せぬ敗戦で悲嘆に暮れるどころか、勝ったような大騒ぎ。最寄り駅までの道中、至る所で緑のジャージーを着たアイリッシュが大宴会。我々日本人にハイタッチを求めてくる人も。
欧州連合(EU)離脱でもめる英国で年内に総選挙が行われる。離脱で懸案となったのが英領北アイルランドの問題。EUに残るアイルランドとの国境をどう扱うのか。いったんはEUと穏便な形で合意したが、英国議会がひっくり返し、選挙突入となった。
かつて北アイルランドは宗派対立や独立運動で武力紛争が激化。多くの犠牲者を生んだ。EU離脱に伴う国境復活でその悪夢再来が懸念される。
ラグビー代表チームは北アイルランドを含め、宗派の違いや国境を超えた「ワンチーム」で構成する。W杯の試合前には国歌でなく「アイルランドの叫び」という特別なアンセムを斉唱した。歌詞の終わりの「肩と肩を組んで」は我々にも響いた。EU離脱後も、あの陽気なアイリッシュが肩と肩を組み続けていてほしいと願うばかりだ。
(2019/11/12 05:00)