産業春秋/“かっこいい車”の礎

(2019/11/15 05:00)

日本自動車殿堂は15日、殿堂入りする3氏や歴史遺産車などの授与式を行う。同殿堂は小口泰平元芝浦工業大学学長らが創設し、自動車産業や自動車文化に貢献した人々を顕彰している。

今年の殿堂入りはインダストリアルデザイナーの小杉二郎氏(故人)、エンジン滑り軸受解析を確立した染谷常雄東大名誉教授、川崎重工業で大型2輪車を開発した大槻幸雄氏の3人。いずれも自動車産業隆盛の基盤を築いた方々である。

中でも小杉氏の活躍は興味深い。東京美術学校(現東京芸大)卒業後、兵役を経て生産工芸研究所を立ち上げた。1948年には東洋工業(現マツダ)のオート三輪のデザインを手がけ自動車分野に進出。

その後もマツダ初の4輪車「R360クーペ」などのデザインに携わった。「使い勝手と美しさ、走る楽しさ」を取り入れたデザイン。当時のモノづくりは技術主体でデザインはあまり重視されなかったが、小杉氏は「デザインは技術開発と同様に重要」とし、工業デザイン思想を提唱、この分野の草分けとなった。

今でこそ“かっこいい”車が若者にもてはやされる時代になったが、敗戦直後にデザインを重視した小杉氏の慧眼(けいがん)は、殿堂入りにふさわしい。

(2019/11/15 05:00)

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