(2019/11/19 05:00)
日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告が、金融商品取引法違反容疑で逮捕されて1年。カリスマ経営者による会社の私物化は、それを許したガバナンス(企業統治)不全を浮き彫りにした。日産はガバナンス改革に取り組むが、企業価値の毀損はあまりに大きい。改革を重ねる努力を怠ってはならない。
仏ルノーと連合を組む日産には外国人も多く、多様な視点による経営が持ち味とみられていた。しかし逮捕される前から「誰もゴーン氏に物言える雰囲気はない」(日産幹部)と明かしていた。ゴーン被告に権限が集中し、不正を許すブラックボックスができあがっていた。
日産は6月にガバナンス改革を実施し、「指名委員会等設置会社」に移行した。計11人の取締役のうち7人を社外取締役とし、執行部門への監督機能を高めた。9月には報酬不正問題が発覚した西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)が辞任した。取締役会が促した事実上の解任で、ガバナンスを強化した新体制が機能したことは評価できる。
ただ形式だけが立派で、中身がおざなりにされたケースは過去の企業不祥事でも指摘されている。特に日産は43・4%の出資を受けるルノーと実質的な親子上場の関係にあり、少数株主は利益相反リスクにさらされる。日産には取締役会がルノーの影響を受けずに適切な判断を下せる環境整備、社外取に十分な情報が伝わる仕組みの構築といった観点で継続的なガバナンス改善が求められる。
日産の20年3月期連結決算は当期利益が前期比65・5%減の1100億円に落ち込む見込み。ルノーとの連合関係も、扇の要となってきたゴーン被告の退場で不安定化した。
自動車産業は「CASE(コネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化)」と呼ぶ新技術が引き起こす大変革期にある。内田誠次期社長をトップとする新経営体制で、事業や提携戦略の基盤であるガバナンス改革をやりきり、日本を代表するグローバルプレーヤーの地位をいち早く取り戻してほしい。
(2019/11/19 05:00)
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