(2019/11/27 05:00)
食べられるのに捨てられる「食品ロス」を減らす法律が施行されて約2カ月。環境や貧困・飢餓問題からも見過ごせない問題であり、政府は25日、食にまつわる小売り、サービス業の代表らでつくる「食品ロス削減推進会議」を立ち上げた。産業界の立場でできることも多い。忘年会シーズンを前に一歩でも取り組みを進めたい。
国内の食品ロスは政府の推計によると、2016年度で643万トン。毎日1人当たりご飯約1杯分(約139グラム)が廃棄されている計算で、10トントラック約1760台分。飢餓に苦しむ人々への世界の食糧援助量の約1・7倍に相当する。
食品ロスの5割強は事業所からで、そのまた4割は外食産業から出されている。宴会での食べ残しによるものも多い。このため、パーティーを開催する業界団体や企業にとっても無視できない問題である。
「食品ロス削減推進法」は10月1日に施行された。国と自治体、事業者、消費者が協力して削減に向けた普及・啓発、調査研究など取り組む。ただ、罰則がなく強制力が伴わない。何をどう進めたらいいのだろうか。
良いお手本が、長野県松本市の「残さず食べよう30・10(さんまる・いちまる)運動」だ。宴会の食べ残しを減らすため、乾杯後の30分間、終了前の10分間は食事に専念することを奨励する。幹事には適量注文、内容や量の調整、残り物の持ち帰り対応、参加者への呼びかけを求める。似た取り組みは千葉、岩手、福井、山口各県などに広がる。
聞けば「食べ残し」にも訳があるようだ。宴会場が「料理は見栄え良く」「少なすぎては恥をかく」と増量を勧める。一方、参加者は「あいさつ回りに忙しく、食事に行き着かない」ことがある。料理の適量は、人数の6―7割との声も聞く。食品も費用も無駄なく満足感を持てるよう知恵を絞るべきだ。
世界に広がった「MOTTAINAI(もったいない)」の起源は日本語。食べられることに感謝しつつ、飢餓に苦しむ人々への想像力を持ちたい。
(2019/11/27 05:00)
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