(2019/11/29 05:00)
企業のオープンイノベーションを促進するため、税額控除を含めた実効性のあるベンチャー企業(VB)投資制度を実現したい。
与党・税制調査会の2020年度税制改革の論議が本格化している。焦点の一つが「オープン・イノベーション促進税制」だ。設立後10年以内の未上場VBを対象に1億円以上の出資を想定している。
注目されるのは税額控除の導入である。出資額に応じて納税額から一定割合を差し引く税額控除は投資する企業にとって恩恵が大きい。制度導入の是非や控除割合は、今後の税調での議論に委ねられている。
この税制は、企業の内部留保を投資に振り向ける狙いがある。経済産業省によると、日本企業が保有する現預金は18年度に240兆円を超え、12年度に比べ26・5%増加した。上場企業に限ると36・8%の増加になる。
一方で日本企業のVB投資額は増加傾向にあるものの、国内総生産に占める割合は0・04%で米国の3分の1にとどまる。1件当たりの投資額も5000万円前後で伸び悩む。
政府は企業の内部留保の活用が経済成長につながると主張している。現状の内部留保が過大かどうかについて産業界には異論があるが、税額控除の割合によってはリスクを最小化でき、新規投資の誘発につながろう。超スマート社会「ソサエティー5・0」を実現する手段の一つとして期待される。
VB経営の専門家は、資金調達の手段が多様化する中で「特徴のない制度はVBに選ばれない」と指摘する。同省はVBにとって投資規模が大きいだけでなく、大企業などから技術開発や海外市場開拓で支援を受けられるのがメリットになるとみている。一方で、大企業の支配力が強まり、VB経営のスピード感や活力がそがれてしまっては本末転倒だ。出資後はウィン・ウィンの関係づくりがオープンイノベーション成功のカギになる。
企業が自社の変革やシナジーの視点からVB投資に前向きになれる制度が求められる。
(2019/11/29 05:00)
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