社説/障がい者雇用の促進 改正法を機に官民で努力を

(2019/12/5 05:00)

改正障害者雇用促進法に基づく新制度が2020年4月にスタートする。障がい者の就労の場を広げるため、官民それぞれの取り組みを加速したい。

現行制度では、障がい者の法定雇用率(2・2%)の未達企業(常用労働者100人超)は不足分1人につき月5万円を国に納付する。達成企業は超過分同2万7000円の調整金が支給される。

今回の改正では、週所定労働時間10時間以上20時間未満の短時間で雇用する企業(同)に特例給付金を同7000円支給する。また雇用促進で実績を上げた中小企業を、優良事業者に認定する制度も新設する。

同時に改正法では国と地方自治体に、障がい者を率先して雇用する義務を明確化した。機関ごとに計画を策定し、任免状況も公表する。また国には民間を上回る法定雇用率(2・5%)を設定しており、未達の場合には民間の納付金と同額を翌年度の「庁費」から削減する。

昨年、国の28機関で3700人に上る不適切な雇用計上が発覚したことは記憶に新しい。新制度は国が自ら襟を正し、率先垂範する狙いがある。中央省庁はこれを先取りする形で、12月末までに約4000人を採用する計画だ。

ただ採用者の大半は非常勤で、すでに退職者も出ているなど急ごしらえの感は否めない。また民間企業から公務員に転職するケースも多く、必ずしも障がい者雇用の市場が広がっているとは言いにくい。

一方、産業界からは短時間雇用では「キャリア形成ができない」「週20時間未満では厚生年金に加入できず、生活不安定者を増やすだけ」など新制度の効果を疑問視する声もある。

政府は官民を問わず、事業主の責任として障がい者を雇用する「社会の連帯」を提唱する。法定雇用率を達成した企業は18年度で45・9%と半数に達していない。しかも20年度中に法定雇用率は2・3%に引き上げられる。取り組みは急務だ。官が模範を示し、民が努力を重ねることで、誰もが働けるしなやかな社会をつくりたい。

(2019/12/5 05:00)

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