(2019/12/11 05:00)
今年は度重なる台風・大雨被害で「共助」の重要性を思い知らされた。自治体職員の減少や住民の高齢化も重なり、ボランティアなくして復旧は進まない。企業は特別休暇制度にボランティア休暇を設けるなどで共助を後押ししたい。
台風19号による洪水被害で中心地が浸水した宮城県丸森町では、今も民家の庭にたまった泥の撤去や屋内の消毒などにボランティアが活躍する。多くは勤労者のため平日は休日の約3割の150人ほどしか集まらず、ボランティアセンターは年末まで活動を続ける予定という。
背景にはボランティア活動を個人の善意に頼っている現実がある。厚生労働省の2019年調査によれば、特別休暇制度がある企業のうち、ボランティア休暇の導入率は4・5%。従業員1000人以上の大企業でも21・7%、同30人以上100人未満では2・9%にすぎない。
被災地支援を社会貢献ととらえるだけでは企業の力の入れようにも限界がある。支援活動の体験を自社の危機管理に生かす発想の転換が必要だ。事業継続計画(BCP)を補強したり、取引先などサプライチェーンの被災時にも経験を有効活用したりできる点を評価すべきだ。
ボランティア休暇を制度化しても、従業員が休暇取得に「後ろめたさ」を感じる職場では利用は進まない。被災地での活動状況や現地の反響を社内の交流サイトで従業員に“見える化”するなどにより、制度を評価する組織風土を醸成したい。
省力自動機メーカーのオーテックメカニカル(山梨県南アルプス市)は、従業員が消防団に参加しやすくするため多能工化を進め、休暇取得時にフォローできる体制を整えている。「消火栓の扱いに慣れた従業員もいて、自社の防災力を強化することにも役立っている」という。
今年のような広域災害に対応するには、多くの企業の協力が欠かせない。ボランティア休暇を制度化するだけでなく、余力があれば、休暇中の賃金の全額支給や交通費の補助、宿泊先の手配など、復旧作業にあたる従業員の支援を手厚くしたい。
(2019/12/11 05:00)
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