(2019/12/13 05:00)
企業の活力を引き出し、日本経済の成長に結びつけたい。
2020年度の与党の税制改正大綱が12日、まとまった。企業税制で一番のテーマは、オープンイノベーションの促進だ。政府は企業の内部留保が高い水準にあるのを問題視している。内部留保を投資に振り向けさせ、業績向上と経済活性化を目指す。
減税措置について一部に企業優遇との批判もあるが、企業にいいとこ取りをさせない工夫も講じた。
企業がベンチャーに投資する際の税負担を軽減する「オープンイノベーション税制」。ベンチャーに1億円以上の出資をした事業会社に、株式取得額の25%相当額の所得控除を認めるが、5年以内に売却した場合は、取り戻すなどの仕組みを設け、短期の売り抜けを制限する。
第5世代通信(5G)の早期普及を狙い、携帯電話事業者らに税制優遇を行う、5G導入促進税制については、設備投資額の15%の税額控除という“大盤振る舞い”を措置する。中国に立ち遅れる5G網整備の加速には、思い切った額が必要と判断した。ただ、大手携帯電話会社には、投資計画を前倒しし、2年間で一気に整備を進めることを求める。
一方で、中小企業の第三者への事業承継を後押しする、株式譲渡益課税の軽減措置は見送られた。政策効果を検討した結果というが、要望した経済産業省は、制度設計を見直し、21年度に再挑戦してもらいたい。
今回の税制改正の基本は税制中立。イノベーション減税を行う一方で、研究開発税制や既存の投資促進税制は、減税要件の賃上げ幅や設備投資額を引き上げ、減税額を削減。交際費減税も消費拡大効果が薄いと判断し、大企業への特例を除外した。
自民党の実力者、甘利明氏が党税制調査会会長に就任して初の大綱作成。5G減税など、踏み込んだものもあるが、全体として小粒な政策にとどめ、財政規律は維持した。社会保障費の大幅な拡大という大波が到来する来年度以降に、甘利税調の力量発揮は持ち越された。
(2019/12/13 05:00)