(2019/12/16 05:00)
企業の景況感は冷え込んでおり、先行きも回復が見通せない状況にある。海外経済の不透明感や消費増税といった重しに悩む日本経済を如実に反映しているようだ。
日銀がこのほどまとめた企業短期経済観測調査(短観)によると、代表的な指標である大企業製造業の業況判断DIは前回より5ポイント下落してゼロとなり、4四半期連続で悪化した。これは日銀が大規模金融緩和を始める前の2013年3月以来6年9カ月ぶりの低水準だ。米中貿易摩擦を背景にした海外経済減速への懸念に加え、10月の消費増税や大規模自然災害などが景況感を下押しした。
大企業製造業の中では自動車をはじめ造船・重機、業務用・生産用機械、鉄鋼などの悪化が目立つ。世界的に資本財の需要が減退している影響が表れている。特に自動車は消費増税前の駆け込み需要の反動が大きく、業況判断をさらに悪化させた。
大企業非製造業は前回から1ポイント下落のプラス20で2四半期連続の悪化となった。消費増税に加えて日韓関係の悪化による韓国人観光客の激減、台風による外出の手控えも響いた。中小企業製造業のDIは5ポイント悪化のマイナス9と振るわなかった。
海外経済の不振や自然災害などが企業の景況感を冷え込ませたのは事実だろう。しかし、そもそも今年は年明けから日本経済の基盤が弱っていたようだ。先日、7―9月期GDP(国内総生産)の改定値と合わせて発表された18年度GDP年次推計は、前年度比0・7%増が同0・3%増とゼロ成長に近い低水準に下方修正されたことが明らかになった。
輸出を中心とする外需の伸びが期待できない現状では、内需主導の経済成長に期待するしかない。内需をけん引するのは企業だ。企業は450兆円を超す潤沢な内部留保を生かして、投資を活発化してほしい。これまでは人手不足に対応した効率化・省力化投資が目立ったが、今後は新しい価値創造への投資が必要だ。それが生産性、収益性を向上させ、景況感の押し上げにつながる。
(2019/12/16 05:00)