(2019/12/24 05:00)
官民ファンドのガバナンス(統治)が問われる事案だ。徹底した検証を望みたい。
農林水産省は官民ファンド、農林漁業成長産業化支援機構(A―FIVE)の業務を実質的に停止する。政府系官民ファンドを中断・廃止するケースは初となる。
A―FIVEは農林水産業の6次産業化の後押しを目的に2013年に発足した。政府の財政投融資300億円と民間19億円の出資金を基に、有望な投資先に出資したり、地銀などと連携した投資組合を通じた投資を行ってきた。ところが投資実績が思うように増えない。18年度までの年平均実績は16億円前後で、投資に対する収益性が低かった。一方でファンド運営の人件費や諸経費のコストは高止まりしていた。結果として累積損失は約92億円に膨らんだ。
農水省は19年度の投資計画で110億円を設定したが、9月末時点の実績は16億円にとどまった。農水省は20年度の関連予算要求を取り下げ、21年度以降の新規投資停止を決めた。20年度は交渉中案件のみの投資にとどめ、122件の投資案件の回収交渉に入る。
A―FIVEは、投資先の選定手法や、出資先企業の活動へのチェックなど、本来ファンドが持つべき機能が果たされていなかったと指摘されている。江藤拓農水相は「専門家の知見も加えて検証を行い、説明責任を果たす」と言う。農水省には監督責任がある。しっかりと検証をし、どこに問題があったのかを解明してもらいたい。
官民ファンドには、A―FIVEの他にも、累積損失を抱えるものがある。累損解消をどう果たしていくのか、監視の目を強化していく必要がある。
ただ、ファンドによる出資金は補助金や制度融資と異なり、使途の自由度が高く、自己資本が充実するため資金調達力が増すといったメリットがある。優良な投資先を増やし収益を拡大して、投資回収の見込みが立てば問題はない。官民ファンドを否定するのではなく、どう機能させていくのか。ガバナンスのあり方が問われている。
(2019/12/24 05:00)
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