(2019/12/26 05:00)
「かつては役職に応じた仕事があった。今は課長補佐に昇進しても、係長と仕事が変わらない」。中堅のキャリア官僚は来年度予算案の折衝が一段落し、疲れた様子でこう話す。
人事院によると、2019年度の国家公務員総合職の応募者数は前年度比10・4%減の2万208人。3期連続の減少で減少率は最大になった。官僚の度重なる不祥事や民間の採用活況が続いているせいもあろうが、本質的な問題がありそうだ。
「人気がないのはうなずける。今は政策を打っても手応えを実感できないから」と、ベテラン官僚はやるせない胸の内を吐露する。時には国民に痛みを強いる施策も必要だが、官邸の顔色をうかがわねばならない。政策が小粒になり、官僚には生きづらい時代になった。
今風にいえば“コスパ”の悪さも影響していそうだ。取材で官僚と頻繁にメールをやりとりするが、発信時刻が深夜ということは珍しくない。国づくりの担い手という自負がなければやりきれまい。
受験者は、狭き門の筆記試験をパスしても、省庁訪問という最後の難関が待ち受ける。まだ学校の銘柄と筆記試験の席次にこだわる古式ゆかしい役所もあると聞く。もっと多様な採用の価値観と方法があっていい。
(2019/12/26 05:00)