(2020/1/8 05:00)
毎年恒例の経済3団体の新年祝賀会。来賓で登場した安倍晋三首相の発言で「おやっ」と思ったのは、賃上げを求める発言がなかったことだ。このところ毎年のように要望していただけに、意外だった。
ただ、安倍首相はあいさつの最後に「課題にどう対応していただくかは割愛する」とも述べた。言わなくても分かってますよね、という思いが言外に込められていた。壇上で聞いていた、財界トップ3人もそれにうなずいていた。
こうしたやりとりをみても、政治と財界の“蜜月関係”がみてとれる。安倍政権が8年目に入る長期安定で、景気もゆるやかな拡大が続いている。産業界にとっても政権安定は大歓迎といったところだ。
心配されていた東京五輪・パラリンピック後の景気の大幅な落ち込みも、現時点では回避できそうなのも、多くの経営者の気持ちを明るくさせている。ただ、世界に目を転じれば中東情勢は緊迫度を増している。米中関係も経済覇権をめぐる対立は長期化が避けられない。国内も少子高齢化や財政悪化は先送りできない課題だ。
10年後の新年祝賀会で「あの時はよかったなあ」とため息をつくことがないよう、今年やるべきことに、政治も経済界も向き合ってもらいたい。
(2020/1/8 05:00)