(2020/1/20 05:00)
郵便事業の慢性的な赤字を金融2社の利益で補うという事業構造に無理はなかったか。
「創立以来最大の危機だ」。日本郵政の増田寛也社長は就任後初の会見で、被害の全容解明と信頼回復に全力を挙げる決意を示した。かんぽ生命保険の不正契約問題で長門正貢前社長が引責辞任した後のトップとしては当然の発言だ。
一連の不祥事で、かんぽ生命と親会社の日本郵政の株価は、上場来安値を記録した。両社の個人株主には、郵便局に信頼を寄せる高齢者が少なくない。かんぽ契約者の中心層は中高年だから、株価下落と不正契約の二重の被害に遭っている恐れもある。
増田新社長は、建設省(現国土交通省)から岩手県知事に転じ、総務相や政府の郵政民営化委員長を務めた。社長就任の打診を一度は断ったが、最終的に引き受けたのは、郵政民営化に深く関わってきた責任からだ。
「まず足元を固める。マイナスをゼロに戻す」との基本方針を示したものの、前途はいばらの道だ。金融庁は、かんぽの新規販売を3カ月間停止する処分を下した。総務省は業務改善計画の提出を命じた。不適切契約の全容解明と再発防止策の策定が急務だ。
郵政民営化で民間金融会社となったかんぽ生命とゆうちょ銀だが、金融商品の販売は全国2万4000の郵便局に頼っている。一方、赤字体質の郵便事業を抱える日本郵便も、郵便局から上がる金融2社の販売手数料収入に依存する。
民営化以降、過度な販売ノルマが現場を苦しめてきたという。その背景に、利益を上げなければ株価を維持できないというトップの思い込みがあったのではないか。増田社長は内部の固め直しを優先し、歴代社長のような成長戦略を封印する戦略をとった。賢明な判断だ。
全国一律サービスの郵便事業の維持と、低金利下で内外企業との競争にさらされる金融事業を今後も一体的に運営するのが最適解なのか。増田新体制は、日本郵政のグループ経営のあり方を再検討する責任がある。
(2020/1/20 05:00)
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