(2020/1/22 05:00)
明治神宮が創建から100年を迎える。70万平方メートルの敷地に広がる原生林のような鎮守の杜は「公園の父」と称される本多静六博士らの苦心作で、最近は森林浴でも人気スポットになっている。
本多は1866年、現在の埼玉県久喜市の裕福な農家に生まれる。幼くして父を亡くし、暮らし向きは一変するが、苦学して東京山林学校(現東大農学部)に進む。落第を経験しながら首席で卒業したのが自信になった。
日比谷公園を皮切りに各地で多くの設計を手がけた。明治神宮はドイツ留学で学んだ「天然更新」の技術を用い、自然の力だけで成長する永遠の森づくりを基本理念にした。当時の首相の大隈重信は伊勢神宮のような荘厳な杉林を望んだが、東京の気候風土に適した常緑広葉樹林を認めさせた功績は大きい。
現在は234種、約3万6000本の樹木で覆われ、50種類以上の野鳥が確認されている。主木が入れ替わり、常緑広葉樹に針葉樹が混じる多様性を最終段階とした天然更新は、強固な組織づくりにも通じる。
蓄財にもたけ、一財産を築くが、東大退官を機に私財の大半を匿名で社会事業に寄付する。その大樹のような根太い生き方は、経営者の不祥事が続く現代への教示ともいえる。
(2020/1/22 05:00)