社説/新型肺炎、経済に波及 打撃軽減へ、冷静に対策検討を

(2020/2/4 05:00)

中国・武漢で発生した新型コロナウイルスの感染者が急速に拡大し、中国からの入国制限などの措置が現実化した。もはや世界経済への打撃は避けられない。企業は事態の悪化を想定した自社のサプライチェーンの見直しなど、冷静に対応を準備すべき段階だ。

新型肺炎に関しては日々、新たな情報が伝えられている。中国以外での死者が確認され、世界的な大流行(パンデミック)寸前という見方もある。一方でワクチン開発や簡易な診断につながるウイルスの分離に日本国内で成功するなど朗報もある。

未知の事態であるだけに、在野の専門家の意見が必ずしも当を得ているとは限らないのが辛いところだ。国立感染症研究所は現状を「国内でも知見を蓄積していく必要がある」段階とし、当面は「咳エチケットやうがい、手洗いなど、基本的な感染対策が重要」と呼びかけている。

こうした手探りの中で、中国への進出企業や取引相手を持つ企業は情報収集と対処に追われている。トヨタ自動車やホンダなど、中国に生産拠点を置く企業は、春節休暇を延長する対応をとる。

中国と日本は、素材や生産設備、部品、完成品までさまざまな段階で、モノが行き来する強固なサプライチェーンを構築している。中国で生産が再開できない事態が長引けば、日本の生産体制や製品供給にも影響が及ぶことは避けられない。企業は調達ルートの変更や代替生産の可能性など取り得る対応策を幅広に検討しておくべきだろう。

国内では観光産業への打撃が顕著だ。中国の春節シーズンの訪日客が激減しただけでなく、感染が確認されれば、日本国内でも旅行の敬遠が懸念される。政府は経済面での損失を把握し、地域経済の落ち込みを軽減する措置も講じていくべきだ。

残念ながら現代に至っても、人類が完全に感染症を克服したわけではない。日本国内でも毎年、高齢者を中心にインフルエンザを原因とする死者が出ていることを記憶にとどめ、万一にもパニックに陥ることがないようにしたい。

(2020/2/4 05:00)

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