(2020/2/5 05:00)
戦後75年、日本企業の業界地図は大きく塗り変わった。象徴的なのがビール業界。独占禁止法の具体例としてビール業界が題材にされた。1970年代にシェア約60%と圧倒的だったキリンビールは将来、独禁法に抵触する可能性もあると言われた。
少子高齢化のなかで、アサヒビールが『アサヒスーパードライ』で大攻勢をかけ、キリンは一転して追われる立場に。96年社長に就任した佐藤安弘さんは、発泡酒『淡麗』や缶チューハイ『氷結』を市場投入する一方で、生産・流通を再構築した。
尼崎工場(兵庫県尼崎市)閉鎖の公表直後には自ら工場を回り、その必要性を説いた。工場跡地はJR駅前再開発で、若い世代が居住する町に生まれ変わった。卸の再編では身内の企業でも、是々非々を貫いた。
豪州のビール事業買収で成長戦略を決めた後に悩んだのが、医薬事業の継続。「売却するのか」と詰め寄る記者に「言えないと言ったら言えない」を貫き、うそは話さなかった。
ビール業界トップに珍しい非営業出身で、後任には医薬畑の荒蒔康一郎さんを選んだ。交代時には「私が選んだ人を見てください」とかつての“はやり言葉”で記者を沸かせようとした。生真面目なサービス精神が忘れられない。
(2020/2/5 05:00)