(2020/2/7 05:00)
中国・武漢市を起点とする新型コロナウイルスの流行が、企業業績にも影を落としつつある。新たな“チャイナリスク”への悪影響を低減するカギは、より柔軟な事業継続計画(BCP)の運用にかかっている。
新型ウイルスの経済への影響は多段階で襲ってくる。直接的な日本企業への影響は、訪日外国人の大幅な減少による、国内観光産業や小売りでの販売減。三越伊勢丹ホールディングスは、2020年3月期の連結業績予想を下方修正した。
悩ましいのは、中国での生産や販売活動の停止・停滞がいつまで続くかが読めないことだ。トヨタ自動車のディディエ・ルロワ副社長は、「インパクトは現段階ではわからない。何が起きるか分析しないといけない」と憂慮する。ファナックの山口賢治社長も春節後の受注状況について「見通せない」とした。
ソニーは同3月期の業績見通しを上方修正したが、「ウイルス感染の影響は含んでおらず、事態の進展で上方修正を打ち消す可能性も否定できない」(十時裕樹専務最高財務責任者)と懸念を表明している。
6日時点で、新型ウイルスへの感染者は2万8000人、死者は560人を超えた。一時より勢いは収まったが、拡大基調は続いている。武漢をはじめ、上海や重慶など、中国主要都市での生産活動は停止が続いている。長引けばサプライチェーンが分断され、企業業績への悪影響は避けられない。すでに韓国の現代自動車は部品が滞り、国内での自動車生産を停止した。
一部の企業はBCPを発動し、社員の安全確保や調達ルートの多様化、代替生産の検討を進めている。ただ、日本企業のBCPは大規模災害の発生を想定したものが多い。感染症にも適用できるものはあるが、災害時と異なるのは、被害の規模と、今後の回復への時間軸が現状では読みにくいことだ。
今回の事態を踏まえ、さまざまな可能性を想定したより柔軟なBCPの策定が求められる。米中貿易摩擦に次ぐ新たなリスクの回避へ、中長期的な視点での対応も検討するべきだろう。
(2020/2/7 05:00)
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