(2020/2/11 05:00)
映画『男はつらいよ』シリーズの主人公、車寅次郎は定職に就かず自由奔放。日本中を旅するが、経済成長とはおよそ縁遠い。そんな寅さんが国内総生産(GDP)に貢献する。
政府は2020年末からGDP統計に、映画や音楽、テレビ番組、書籍の原本の付加価値額を計上する。国際基準に対応し、経済の実態を反映させるためで、映画の場合製作に要したコストを積み上げて推計する。
寅さん映画が始まった1969年は、高度成長の真っただ中。日本の実質GDPは約170兆7645億円で、年率10%超の成長は当たり前だった。半世紀後の18年のGDPは金額こそ3倍になったが、成長率は1%を切った。
映画界に目を向ければ、19年の興行収入は00年の統計開始以来最高を記録した。『男はつらいよ』の最新作も目下快調だ。前回49作目までの観客動員は約8000万人、興行収入は約900億円。アニメーションにも大作はあるが“国民的映画”がもたらした影響は小さくない。
経済のソフト化がいわれて久しいが、文化が評価されるには時間がかかるということか。「GDPは幸福度を測るものではない」との声もあるが、「それを言っちゃおしまいよ」と寅さんに嘆かれそうだ。
(2020/2/11 05:00)