社説/日本製鉄高炉休止 鉄鋼生き残りへ意思決定早めよ

(2020/2/13 05:00)

日本製鉄が呉製鉄所の閉鎖など、大規模な経営合理化策を発表した。鉄鋼業界は厳しい経営環境が続いている。苦渋の決断を前向きにとらえ、世界市場で生き残れる強靱(きょうじん)な体質への転換を期待したい。

同社は、子会社の日鉄日新製鋼呉製鉄所の操業を2023年に全面休止、和歌山製鉄所の第1高炉も22年度上期に休止する。同時に厚板製造、薄板製造の生産ラインの集約や、チタン丸棒・溶接管事業から撤退する。一連の取り組みで、粗鋼生産能力の削減規模は年間約500万トン、収益改善効果は約1000億円を見込んでいる。

同社が大規模な合理化を決断した背景には、中国での鉄鋼の過剰生産や原材料の上昇で採算悪化が続いていることと、少子高齢化で国内市場の縮小が避けられないことがある。また、同社は温暖化ガスの排出量でも国内有数で、今後の脱炭素社会への移行が進む中で、多大な追加負担を抱えるリスクも指摘されていた。

右田彰雄副社長は「現状の生産能力は将来を見据えると大き過ぎる」と認めている。ただ、今回の合理化でも生産余剰は解消されないとみられており、さらなる設備の集約にも踏み込む必要がある。

同社は合理化策と同時に、「監査等委員会設置会社」への移行を発表した。意思決定を迅速化し、取締役会の経営への監督機能を強化するのが狙いだ。激変する世界市場のなかでは、経営のスピードが求められる。鉄鋼業は、地域経済とも深くつながっているだけに、高炉休止などには、さまざまな圧力もかかり、結果として意思決定が遅れてしまうとの指摘もあった。

まずは、欧州アルセロール・ミタルと共同買収したインドのエッサール・スチールの事業拡大、超高張力鋼板の供給体制強化や新材料の開発など、成長分野への投資を大胆に進めることが生き残りへの課題である。

重厚長大型産業の代表格である同社が、新しい経営体制のなかで、どこまで変革できるか。生産性向上に直面する日本企業にとっても大いに参考になる。

(2020/2/13 05:00)

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