(2020/2/17 05:00)
宇宙開発は安全保障とビジネスの両面で国家にとって欠かせない技術力だ。よりコスト競争力を意識し、商用利用の成功を目指してもらいたい。
日本の次期主力宇宙ロケット「H3」の開発が順調に進んでいる。試験機の打ち上げは約1年後、2020年度後半の予定だ。完成すれば日本は、より少ないコストで現在の「H2A」「H2B」を上回る打ち上げ能力を獲得することになる。
H3はまた、国が関与しつつも民間企業(三菱重工業)が初めて開発主体となったロケットだ。国側の責任者である宇宙航空研究開発機構(JAXA)の岡田匡史プロジェクトマネージャは、パートナーとしての三菱重工を「独自のアイデアなど期待以上の成果を出してくれている」と高く評価している。
JAXAと三菱重工は、当初から「技術開発ではなく事業開発」(岡田プロジェクトマネージャ)という認識で開発を進めてきた。日本の衛星打ち上げロケットは、技術力では世界の最先端。しかしコストでは見劣りするのが実情だ。打ち上げるのは国の衛星が大半で、放送用などの商用衛星の受注実績は数件しかない。
H3は製造コストを削減すると同時に、打ち上げ前の点検や衛星搭載の所要時間などをH2Aの半分程度に短縮し、柔軟な打ち上げに対処できるようにする。商用衛星の獲得による事業創出が狙いだ。
ただロケットビジネスで先行する欧州は、静止軌道へ衛星を到達させやすい赤道の至近に発射基地を置くことで、有利な地位を占める。米国の民間打ち上げ会社であるスペースX社は、安価なエンジンを数多く組み合わせたクラスター方式を採用するとともに、その一部を打ち上げ後に回収・再利用する技術を確立し、圧倒的な低コスト化を武器にしようとしている。
H3ロケットの性能が世界最先端なのは間違いないが、コスト面で海外勢との競争に勝てるかどうかは微妙だ。試験機の開発完了後も技術に磨きをかけ、商用衛星ビジネスの事業開発を成功させてほしい。
(2020/2/17 05:00)