(2020/2/28 05:00)
政府は家庭の電力使用状況を第三者に提供し、有効活用する仕組みを導入する。個人情報保護に万全を期しデータ利用の先進例となることを期待したい。
スマートメーター(通信機能付き電力量計)の普及で、電力の使用量を30分単位で把握できるようになった。各電力会社は全世帯・事業所へのスマートメーターの導入を、2024年度末に完了させる計画で、台数は約8000万台に及ぶ。
電力使用状況を見れば、在宅か不在か、居住人数、戸建てか集合住宅かなど、多岐にわたる情報を得られ、日々の変動も把握できる。各世帯のライフスタイルを知る貴重な情報だ。
現行の電気事業法は、使用情報を電気事業目的以外に提供することを禁止している。経済産業省は今通常国会に提出した電気事業法改正案に、「情報の目的外利用禁止の例外を設ける」制度整備を盛り込んだ。
法改正で実現するのは大きく二つ。災害時に自治体や行政機関などが、迅速な避難に結びつけたり、事前の防災計画作りに役立てたりするために、使用者の同意なく情報を自治体などに提供するというもの。公布の即日から実施される。
もう一つは、民間への情報提供に道を開くもので、個人情報保護へさまざまな仕組みが導入される。大前提として、外部への情報提供には、使用者の同意が必要となる。使用者と情報を得たい事業者との間に、中立的な組織を設け、そこが使用者の同意を確認し、事業者の適格性を審査して情報を提供するようにする。運営の詳細は経産省で検討し、22年4月にも施行される見通し。
民間に電力の使用情報が解放されれば、例えば宅配事業者が在宅時間の傾向を把握して適切な配送ルートを計画したり、小売店が新規出店を検討する時にも有効活用できる。
新設する中立組織が、個人情報を厳格に守りながら、公平中立な立場で、機能を果たせるような仕組み作りが重要になる。社会にとって役立つ新しい情報流通のビジネスモデルを実現してもらいたい。
(2020/2/28 05:00)
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