(2020/3/5 05:00)
東日本大震災から満9年を前に、映画『フクシマフィフティ』(松竹/KADOKAWA)が6日に公開。豪華な俳優陣が、東京電力福島第一原子力発電所事故の緊迫と、原子炉の制御に懸命に取り組んだ現場作業者の情熱を伝える。
見応えがあったのは序盤、原発に押し寄せた大津波。視覚化された「想定外の現象」が、過酷事故の原因だと納得させられる。主人公らは「自然をなめていた」と語る。
現場に対する官邸や東電本店のチグハグな指示を、どう受け止めるかは悩ましい。震災時、政府など関係者はケタ違いの死傷者や計画停電など多面的な対応に追われていた。劇中の首相はじめ実在の人物の言動に、ドラマの要素が含まれることを忘れるべきではない。
終盤、自分の家族を含めた近隣住民の避難所で、主人公が「住めない街にしてしまいました」と頭を下げるシーンが切ない。現場に踏みとどまった50人の英雄は、故郷に被害をもたらした一員でもある。
映画は福島第一事故を「決して風化させない」とする一方で、原発の是非には踏み込まない。ただ暴走の収束に命を賭けた所員、協力企業、そして自衛隊員の誰にも批判を語らせなかったことが、ある種のメッセージに感じられた。
(2020/3/5 05:00)