(2020/3/10 05:00)
自然災害からの復旧は、土砂や廃材など廃棄物処理も大きな課題となる。台風や豪雨による災害は多発・激甚化する傾向にある。被災地が蓄積してきた初動対応や分別・リサイクルなどの知見を活用し、復旧・復興力を底上げすべきだ。
災害廃棄物の発生量は、東日本大震災が3100万トン(旧警戒区域と旧計画的避難区域を除く)、阪神・淡路大震災1500万トン、熊本地震311万トン、平成30年7月豪雨が岡山・広島・愛媛の主要被災3県で200万トンに上る。
東日本大震災で272万トンの廃棄物を処理した仙台市は、可燃物、不燃物、資源物の分別管理を徹底したうえ、コンクリートや金属のくずはリサイクル、津波堆積物は復興資材に使用した。リサイクル率は震災廃棄物で72%、津波堆積物で96%を達成し「仙台方式」と評される。
自治体の災害業務では避難所対策などに比べ廃棄物処理は手薄になりやすい。担当者の異動時にノウハウを引き継ぎやすくするためにも、災害廃棄物処理計画を策定し、初動対応の方針や仮置き場の候補地、役割分担などを決めておくことが肝要だ。その際、地震、津波、土砂災害、集中豪雨など災害の種類により、初動対応、排出の時間軸、廃棄物の状態、処理方法などが異なるため、地域特性に応じた優先順位付けが求められる。
また産業廃棄物処理や建設・土木などの事業者と協定を結んでおけば発災時に随意契約で透明性の高い発注ができる。自治体の水害復旧に携わったコンサルタントは「協定は定期的に勉強会を開催するなど顔の見える関係づくりができないと実効性を担保できない」と話す。
環境省の調査によると、全国で災害廃棄物処理計画を策定している市区町村は52%(2020年3月末時点、策定見込み含む)。同省ではモデル事業による策定支援などを通じて25年度に60%達成を目指している。マンパワーや知見が足らない中小自治体こそ計画を策定し、他の自治体や関連業界と信頼関係を構築しておきたい。関連業界からの働きかけも大事だろう。
(2020/3/10 05:00)
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