(2020/3/17 05:00)
就活生の子どもがいる知人は気苦労が絶えなかった。会社訪問は連敗続きだったが、下手な励ましは逆効果になりかねず、家族は普段と変わらない対応に努めた。やっとのことで内定をもらうと、本人以上に家族の方が喜んだという。
新型コロナウイルスの感染拡大による業績悪化で、内定を取り消す企業が出始めた。3月ともなればスーツなど一式買いそろえ、就職の支度が調う頃。取り消しにあった本人はもちろん、家族の心中はいかばかりか。
企業は業績悪化など特別な事情がない限り内定を取り消せない。内定取り消しがネットで学生たちに拡散すれば、コロナ収束後、採用難に陥る恐れもある。雇用調整助成金の特別措置を活用するなど取り消し回避に万全を期したい。
内定取り消しは2008年秋のリーマン・ショックの後、社会問題になった。厚生労働省によると、09年春入社の新卒採用は447の事業所で2143人の取り消しが確認されている。コロナの封じ込め同様、官民挙げて同じ轍(てつ)を踏まないようにしたい。
企業の事情はどうあれ、希望にあふれる若者が社会人への門出を前に進路を断たれる不条理は切なすぎる。コロナ・ショックは日本社会の包容力も試されているのだろう。
(2020/3/17 05:00)