(2020/3/18 05:00)
役職員らが多額の金品受領問題を引き起こした関西電力の新体制が逆風の中、始動した。経済産業省から極めて重い業務改善命令も出された。森本孝新社長には、地に落ちた信頼の回復へ、不退転の覚悟で取り組んでもらいたい。
問題の調査を担当した第三者委員会は報告書で、関電の役職員75人が、福井県高浜町の元助役から総額3億6000万円相当の金品を受領し、一方で原子力発電所関連工事をめぐり、元助役が関与する複数の企業に、事前に発注を約束したり、発注額を増額するなどの便宜供与があったと認定した。
問題発覚後も、同問題を上層部の決定で取締役会に報告せず、報道されるまで公表しなかった。業績悪化時に電気料金引き上げに踏み切る条件で実施した役員報酬カットも、後に秘密裏に補填するなど、身内に甘い体質も露呈した。第三者委は、関電の行為を「明らかなコンプライアンス(法令順守)違反で、ガバナンス(企業統治)観点からも極めて重大かつ深刻な事態」と断じた。
今回の問題に至った背景には、原発の運営・再稼働の影響があったとされる。特に東京電力福島第一原子力発電所事故後、原発再稼働に神経質になった関電は、地元との関係悪化を恐れ、30年あまり続いていた地域の有力者の元助役との異常な関係を断ち切れなかった。
関電の森本社長は、再発防止に向けた取り組みを検討・実行する「経営刷新本部」を立ち上げた。まず取り組むべきは、原発事業は“別格”という意識を排し、透明性ある事業運営をすることだ。甚大な被害を起こした福島第一原発でも、東電の縦割りの弊害が指摘されていた。
関電はガバナンス強化へ、会長を社外から招へいする方針だが、現経営陣が体質を変える決意を持たなければ、ただのお飾りになりかねない。
原発への厳しい目が向けられるなか、今回の問題は関電だけでなく日本のエネルギー政策にも多大な影響を及ぼす。世間の強い批判を謙虚に受け止め、信頼回復に努めてもらいたい。
(2020/3/18 05:00)
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