(2020/3/19 05:00)
少し前の小欄で旧国鉄のスト権ストに触れたところ、読者の方から「石油危機の方が今の世相に通じる」とご意見を頂いた。トイレットペーパー騒動は、直接の経験がない世代にも知られている。
当時はペーパーだけでなく、石油を主原料とする合成洗剤も店頭から消えた。戦時中の食料統制の記憶からか砂糖や塩も買われ、政府は「ご安心下さい。塩は専売品です」というポスターを配った。
プロ野球のナイター中止、鉄道の終電繰り上げやビルのエレベーター停止、ガソリンスタンドの日曜休業などが相次いで打ち出された。どれも「総需要抑制策」によるエネルギー消費削減が目的。感染症対策とは違う。
何より当時は「狂乱物価」。消費者物価指数が20%以上も上がって庶民を苦しめ、春闘のベア回答は軒並み30%超だった。デフレから抜け出せない現代からは想像もできない。
石油危機の反省から生まれた「国民生活安定緊急措置法」が、半世紀近くを経てマスクの価格安定のために発動されたことに感慨を覚える。物流も消費もボーダーレスになったが、島国の日本では、まだ政府が介入できる余地が大きい。花粉の飛散も今がピーク。ひとりでも多くのマスク難民が救われますように。
(2020/3/19 05:00)