(2020/3/23 05:00)
規模の大きな地震では、震源から数百キロメートル離れた高層ビルが周期の長いゆっくりした揺れに襲われる。長周期地震動がもたらす被害軽減へ、緊急地震速報の実用化を急ぎたい。
長周期地震動は小刻みに揺れる短周期の震動に比べ、周期が数秒から数十秒と長い。地盤と共振して遠方まで伝わり、高層ビルや長大橋などを揺らす。高層階ほど長時間にわたり大きな揺れが生じやすく、昇降機の閉じ込めや事務機器などの転倒・移動による人的被害、情報システムなどのインフラ障害が発生しかねない。倉庫など低層の建物でも荷物の落下事故が懸念される。
東日本大震災では震源から約800キロメートル離れた大阪府咲洲庁舎で昇降機の閉じ込め事故が起こった。発生が切迫する南海トラフ巨大地震では、震源地付近だけでなく、遠距離にも被害が及ぶ危険性が高い。
緊急地震速報は、震源に近い地震計でとらえた初期微動(P波)を解析。各地の震度などを予測し、専用端末や携帯電話などで速報する。近年は予測技術の改良や海底地震計の整備などで精度向上も進んでいる。
一方、長周期地震動は現状では緊急地震速報の対象外。予報の提供業者や利用者は、防災科学技術研究所と精度を高める手法や適正な使い方などについて実証実験を進めている。実験の成果を踏まえ、事業者団体の「緊急地震速報利用者協議会」(東京都千代田区)は、気象庁に予報業務の早期実現を要望している。
長周期地震動の予報を活用できれば、被災想定地は震源から遠距離にあるため、何十秒も猶予時間を稼げる。その間に昇降機を最寄りの階で自動停止して閉じ込め事故を防いだり、高層階では危険物の少ない廊下などへ避難したりできる。
課題もある。揺れの大きさは震度と異なる4階級の「長周期地震動階級」を使う。階級3(立っていることが困難)は震度6弱に相当するなど、利用者が混乱する恐れもある。階級ごとの危険度を事前に周知する工夫も求められる。
(2020/3/23 05:00)
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